今回自分は体験版はおろかサイトすらまともに見ていない。
よって情報を殆ど仕入れてない初見状態でゲームをプレイした。
序盤の流れは学園に潜入したエージェントというありがちな学園物。
我が強い自分の事しか考えていない(アリアンナ以外)メンバーと共に過ごしていく……。
かと思いきや、石化やらゲゼルマンやらエピソードχやらなにやらきな臭い展開になっていき、chapter3後半で一気に生命の存亡をかけた異能力バトルと化した。
今作の特徴の一つは種族を越えた友情。
強大すぎる敵、あらゆる困難や絶望、時には裏切り等とにかく主人公サイドに不利な状況をこれでもかとぶつけてくる。
しかし、生まれも種族も生き方も全く違うペガサス組の面々が乗り越えていく熱さが伝わってくる。某漫画雑誌にもある「友情・努力・勝利」が詰まっている感じがした。
ただ主人公たちの成長や絆をメインにしたせいか、とにかく人が死ぬ。特徴ある立ち絵無しモブどころか立ち絵無しのキャラすら容赦ない。生徒のために散ったシャーロット先生、そして宣言後のメア…(死亡フラグは立てていたけどできれば回避してほしかった。)
また人の死以外にもひたすら無能ムーブをかましつづける大人達も多い。序盤から登場し、最後まで有能だったのはモブを含めてもレイ先生やネスター軍曹くらいしかいない。
ただこれもペガサス組を成長させるための重要なスパイスだったのかもしれない。
絶対裏切ると思ってたよ…。
バトルシーンは異能力バトルらしく様々な力を使った厨二バトル。ただ力の源が「意思」であるせいか戦闘しながら互いの口撃も多数あった。それがうるさく邪魔に見えるかは受け取り方次第。
ちなみに自分は中々良かったと思う。
……さて、このライターの特徴と言えばなんだろうか。
そう、「叙述トリック」である。
「アメグレ」「さくレット」でも猛威を振るった氏の得意技。しかも今回は二つ。
そしてその一つは……
吸血鬼が支配した世界
はい、気づきませんでした。(3敗目)
人間と獣人の大陸ではなく、吸血鬼が大半で人間がごくわずかという正にひっくり返される世界観。
異能力のお陰で常人離れした力を持っているわけでなく、何もなくても最初から力があったということが驚きである。
そして真実が分かった途端に狙いが分かるようにメデューサや賢者の石の効果。たった一つの事実から一気歯車がかみ合う瞬間は本当に爽快……
という感じではなく、実際の所最初に感じたのはショックであった。なんせヒロインや登場人物の半分以上が吸血鬼であり、しかもそれらに支配されている人間(主人公・ソーマやルビイ)の事を思うと何となく気分が悪くなるのだ。実際そのネタバラシを食らったchapterでは吸血鬼に憎悪を持つソーマやルビイが暴走しており、吸血鬼から奪われ続けた過去を考えると吸血鬼が悪いじゃねえかと思ってしまう。
しかしここから人間の意思を知り、マークスを中心に隔絶をなくそうと奔走する姿が見受けれれる。
ペガサス組を通じて人種を越えて分かち合うことが出来るという事を世界中に教えるために、人間をもっと生きやすくしたいために、そして親友のために…。
そういった姿を見ていくと最初に感じたショックも薄らいでいくような感じがした。
終盤の戦いは本当に意思と意思のぶつかり合い、レイ先生とメイナートの戦いも良かったし、キルスティンとベルカの吸血鬼の本能を越えた究極の負けず嫌いはもう凄すぎて笑ってしまう。
最終戦のギメルはもう宝石を流れ星のように振らせたりするなど規模滅茶苦茶な正に集大成と言えるバトル。
もう極まってるね。
そしてギメルを撃破した…かと思いきやここでもう一つのトリックが明かされる…。
エピソードχ=ギメルの過去
はい、気づきませんでした(4敗目)
吸血鬼のセシリアを愛し「人間のために吸血鬼なんかいなくなればいい」という最期の願いのために戦い続けた、まごうことなき漢。
こうなってくるとただの悪ではなくもう一つの正義という風にも見えてくる。
黄金の剣本当に格好いい。
そして戦い続けたギメルを全員の絆で倒し、ようやく大陸は平和になった…かと思いきやまさかエウリュアレ。……本当のラスボスいるのかよ…。
決着の付け方も滅茶苦茶でそもそもギメルであれだけの戦いをしただけに蛇足みたいな感じに思える。まあ、「すべてにおける元凶作り」だったり「人類気持ちを一つになるにはやはり大きすぎる敵が必要」とまあ必要なことではある…のかな?
「闘争をなくすにはどうすればいい?→自分一人だけの世界にすればいい」とステキすぎるお考えを持っているためぶちのめすのも容赦しなくてよいのもいい。現に戦い嫌いなアリアンナが容赦なく消滅させてるし。
なんぞこれ。
まとめると序盤中盤後半全てにおいて非常に面白い傑作。
トリックも最高峰で完成度がとてつもなく高いシナリオゲーの最高峰と言ってもよい。
ただし終盤が弱いというのが唯一の難点。
色々書いたけど結論を言えばやっぱエウリュアレいらなかったんじゃない?
またエロシーンがおまけにしかなく、「これエロゲの意味ある?」と疑問が出てしまうのも事実。ぶっちゃけ移植前提で作られているのは?と勘ぐってしまうほど。
最もエロシーン自体はまあ中の下くらいはあるけども。
卒業のシーンでそのままエンディングが流れるため、静かな終わり方な感じがしてちょいと消化不良感も残るが、今作は「ジュエリー・ハーツ・アカデミア」。ようは学園物だし、まあ入学から卒業までの話をいうのもちょうどよいのかもしれない。
ちなみに今作の好きなヒロインはルビイ、男キャラはマークス。
特に最初未熟だったマークスが世界を動かすレベルにまで成長するとは思わなかった。
よくここまでの王のなったもんだ。
可愛すぎる。
総合96点(シナリオ☆3つ キャラ☆3つ 音楽☆2つ Rシーン☆0.5つ)
今年の大作その2。覇権候補は伊達じゃない。
状況が一転二転し、さらに細かい伏線すら回収する天才的展開はもう寝る間を惜しんでプレイしたいと強く思ったほど。歴代きゃべつそふとの作品の中でも一番面白かったかも。
実質一本道だが物凄いボリュームでやりごたえがある。
プレイしてよかったと素直に言える。
本当に素晴らしい作品でした。